ジンバブエで使われていた「ジンバブエドル」
ジンバブエは、およそ1,500万人が暮らすアフリカ大陸南部にある国家です。
ニュースなどで聞いたことがある方も多いと思いますが、かつてジンバブエドルという通貨が使われていました。
現在はRTGSドル(通称ジンダラー・ゾラー)が利用されていますが、2015年に廃止されるまでジンバブエドルが法定通貨でした。
ジンバブエドルは、ハイパーインフレを引き起こした通貨として知られています。
通貨の桁が天文学的なレベルになり、短期間で複数回デノミネーションが実施されたほどです。
日本でもジンバブエのハイパーインフレは有名ですが、最終的には100兆ジンバブエドル紙幣も発行されました。
その後ジンバブエでは他国の通貨が使われ始めたため、ジンバブエドルは法定通貨としての地位を失いました。
現在は発行が止まっていますが、中央銀行が未回収の紙幣が土産物として販売されています。
ジンバブエドルとは?
ジンバブエドルは、複数回に渡って新紙幣の発行やデノミが実施されています。
現在では法定通貨としての価値を失っているものの、RTGSドルと比較して高い知名度を保っています。
・ジンバブエドルの特徴
ジンバブエドルは、ジンバブエ共和国の設立と同時に発行が開始された法定通貨です。
それまではローデシア・ドルが使われており、移行の際には等価交換が実施されました。
ジンバブエドルの発行当時は、価値の高い通貨とみなされており、ドルよりも高値の状態が続いていたほどです。
しかし、その後は経済政策の失敗が続き、最終的にはほとんど価値がなくなってしまいました。
ご存じの方も多いと思いますが、2000年代に発生したハイパーインフレが影響しています。
・ジンバブエドルの歴史
ジンバブエドルは、1980年よりローデシアドルに代わって発行されました。
通貨の補助単位にはセントが使われており、1ドル100セントと、アメリカのドルと似た内容になっていました。
発行当時のジンバブエドルはアメリカのドルより価値が高く、1ドル=0.7ジンバブエドル程度で取引されていたようです。
ところが、その後は徐々にレートが下がり、2000年代に入ると経済が機能不全状態になり、急速に価値を失っていきました。
・天文学的なハイパーインフレが発生した
ジンバブエドルの価値が急速に下落した理由はハイパーインフレです。
当時のジンバブエは、白人の土地を強制収容する法案などが成立したことで、経済が大混乱に陥りました。
そして物価は瞬く間に急騰し、数年間のうちに数百万倍へと上昇し、インフレ率も数億%という天文学的な数字を記録したのです。
ジンバブエドルは数回のデノミを実施しましたが、結局ハイパーインフレには勝てませんでした。
最終的には100兆ドル紙幣が発行され、日曜品が数京・数十京ジンバブエドルで取引される事態になっていました。
・その後ジンバブエドルはどうなったのか?
このようなハイパーインフレに陥った結果、ジンバブエドルは2009年に12桁ものデノミを実施しました。
その後1?500ドルの新紙幣が発行されましたが、インフレには打ち勝てず、2009年をもって発行が停止されました。
それに合わせ、アメリカのドルやユーロ、ポンドや日本円など、複数の国の通貨が法定通貨として認められました。
この時点でジンバブエドルは法定通貨としての価値を地位を失い、ほぼ使われなくなっています。
ただ、公式に廃止されたのは2015年で、最終的に1ドル=3.5京ジンバブエドルのレートで交換されていました。
・かつて発行されていた紙幣
世界的に見ても天文学的なインフレを記録したジンバブエドルですが、さまざまな額面の紙幣があります。
最初に発行された紙幣は2・5・10・20ドルの4種類で、インフレに合わせて1,000ドル紙幣まで発行されています。
2006年にはデノミが実施され、1~10万ドルまで、多数の紙幣が発行されました。
しかしインフレには追いつけず、2008年には1,000億ドル紙幣が発行されたほどです。
また、2008年には再びデノミが行われ、1~500ドル紙幣が発行されました。
ところが、こちらも急速なハイパーインフレの影響を受け、100兆ドル紙幣も登場しています。
2009年にもデノミが実施され、1~500ドルまで7種類の紙幣が発行されています。
ただ、結局は焼け石に水状態であり、以後新紙幣は発行されませんでした。
なお、最終的な円とジンバブエドルのレートは、100兆ジンバブエドル=約0.3円でした。
ジンバブエドルは、国内だけでなく、国際的にも無価値とみなされていたことが伺えます。
まとめ
新興国など、経済成長が著しい国家では、インフレが起こるケースも珍しくありません。
しかし、ジンバブエドルほどハイパーインフレが起きるケースは非常にまれです。
ジンバブエドルは法定通貨としての役割を終えており、資産価値はいっさいありません。
一方、紙幣や硬貨は希少性が高いため、コレクション品としての価値はあります。