BRICSの将来展望…共通通貨は実現可能??
2023年はBRICSに置いて大きな動きがあった年として歴史に残るでしょう。
とはいっても、BRICSがこれからも存続していることが条件となります。
大きな動きというのは、BRICSが拡大するということです。
ご存知のようにBRICSの構成国は、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の5ヵ国です。
それぞれの頭文字を取って『BRICS』と名付けられました。
●BRICSのおさらい
BRICS構成国であるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国に共通しているのは高い経済成長率です。
そして何よりも資源大国であり地域大国でもある点です。
ブラジルや南アフリカという南米大陸とアフリカ大陸で随一の経済力を誇る国々の存在も見逃せません。
この数年のうちに中国はGDPで米国を抜くことが確実視されており、インドにおいてもドイツや日本を抜いてGDP世界3位に入ることがほぼ確実となっています。
ロシアは低成長となっておりますが、資源大国としての潜在力は高く、何よりも旧ソ連時代より培ってきた、高い宇宙技術や軍事技術を持っています。
ブラジルと南アフリカ共和国も高い成長率を誇り、BRICS5ヵ国で近い将来G7全体のGDPを抜くことも視野に入れています。
あらゆる面でG7を脅かす存在であることは間違いなく、G7の存在意義を問われる事態になっているのも間違いありません。
そのため、近年ではG7よりもBRICSを含めたG20のほうに注目が集まっているという事実もあります。
そのような中、G7に匹敵する、あるいは凌駕する力を持とうとしているBRICSの構成5ヵ国。
そのBRICSが2023年8月に南アフリカで行われたBRICS首脳会議で、新たに6ヵ国の加盟国を発表したのです。
●拡大BRICSへ
正式に加盟が承認されたのは、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6ヵ国です。
いずれも後進国ではなく、中進国に位置づけされる国々です。
BRICSほどではないにしても、それぞれの地域において大きな力を有しています。
資源国である点もBRICSに似ていると言っていいでしょう。
そもそもBRICSの5ヵ国によるGDP合計額でG7に匹敵する力、あるいは追い越すことを目標としてきました。
その潜在能力は十分にあったはずなのですが、ここにきて中国の経済成長の失速が確実となりました。
それでも、G7各国に真似のできない6%以上の経済成長率を誇ります。
ただし、その高い経済成長も偽りではないのかといった声がかなり前からありました。
また、高い成長率を誇っても、人口で割る一人当たりのGDPは依然低いままであり、貧富の差が増大したことが問題視されています。
ロシアの失速も顕著であり、東側諸国を牽引した旧ソ連時代の面影は微塵もありません。
過去の資産で生きてきた国といってもいいでしょう。
世界最大の民主主義国家と言われるインドは高い経済成長が約束されており、BRICSの中でも優等生的存在と言えますが、人口の爆発的増加と貧富の拡大など、中国と似たような問題が山積しています。
ブラジルと南アフリカ共和国も同じような問題を内包しており、BRICSの活動が袋小路にあるのは間違いありませんでした。
G7よりも利害関係で結びついている感が強いBRICSは、ちょっとしたことがきっかけでBRICS事態が崩壊する危機にあるとさえ言われています。
そのような中にあって、手詰まりとなった感のあるBRICSに新たな国を加盟させることで、活気を取り戻すことを狙ったのは間違いありません。
それが、6ヵ国加盟を承認した拡大BRICSなのです。
●拡大BRICSとは
そもそもBRICSとは、共同体のものであり、NATOやEUのような軍事同盟や同一通貨を基軸とした運命共同体のようなものではありません。
APECよりも弱い繋がりといってもいいでしょう。
条約が結ばれていない、単なる会合に参加しているに過ぎない繋がりです。
しかし、従来のBRICSから拡大BRICSになることによって、勢力が拡大することは間違いないでしょう。
もっとも、拡大BRICSの中で一番経済力のある中国が牽引していることは誰の目にも明らかです。
中国が主導している一帯一路やAIIBが思うように機能してなく、それに変わる新たな枠組みを模索。
その中で、BRICSに注目したのは間違いありません。
今回の拡大BRICSには、サウジアラビアやイラン、UAEといった中東産油国が入っているのが特徴的で、さらにアフリカ大陸からエジプトとエチオピアの2ヵ国、南米大陸からブラジルに次ぐ地域大国であるアルゼンチンと、拡大BRICSによるバランスの良さが際立ちます。
拡大BRICSの正式な発足は2024年1月となっており、EUのような将来的な共通塚の導入など、これからの活動が注目されています。