G7に対峙するべく第2極を目指すBRICSの問題点とは?
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字を取った集合体であるBRICS。
2000年代、21世紀に入って上記の5ヵ国は目覚ましい経済成長を遂げます。
特にロシアはソ連解体後の低迷期を抜け出し、豊富な資源を武器に経済発展を遂げました。
しかし、BRICSには問題が山積しています。
2000年代に「世界の成長エンジン」として注目を集めました。
しかし、近年はBRICSの存在自体が薄れてきています。
その中で2023年の拡大BRICSは注目を集めてはいましたが…。
ここでは拡大BRICSを含めた、BRICSの問題点について考えていきます。
●考えられるBRICSの問題点
BRICSの弱点は大きく分けて以下の3つが挙げられています。
●●1. 構成各国の経済格差
まず1番としてBRICSを構成する5ヵ国の経済格差です。
もともと、BRICSの中で中国とロシアが経済面では突出しており、BRICSを牽引する存在でした。
そこにインドが台頭し、相対的にロシアが失速する形となります。
中国は加速度的に成長を遂げ、日本を抜いてGDPが米国に次ぐ世界2位になったのも遠い昔のようです。
そして、残りの2ヵ国の南アフリカとブラジルですが、南アフリカはもともと経済規模が小さい国でした。
それでも、アフリカでは地域大国であり抜きんでた経済規模を誇ります。
ブラジルも南米随一の経済大国です。
しかし、いずれも世界的に見れば、発展途上国の域を出ず、貧困問題を筆頭に様々な問題を抱えています。
インドもGDPで日本を抜くとされていますが、人口が多いため中国同様一人当たりのGDPでは、最貧国とは言わないまでも貧しい国と言わざるをえません。
ロシアもウクライナ問題を抱えているので、言うに及ばずです。
こういったことからも、世界的に見ても途上国であることは変わらず、BRICS内においても経済格差が大きいので、この問題点だけでもBRICSの結束を弱める要因となっているのです。
BRICS5カ国は、経済規模や発展段階に大きな差があります。中国は世界第2位の経済大国に成長していますが、南アフリカは他の4カ国に比べて経済規模が小さく、貧困問題も深刻です。この経済格差は、BRICSの結束を弱める要因となっています。
●●2. 政治体制の違い
2つめは政治体制の違いです。
G7は基本的価値を共有する資本主義・民主主義の国が集まっています。
一方のBRICSはそれぞれ政治体制が違います。
中国は言わずと知れた社会主義の国です。
ロシアの前身のソ連は社会主義国家でしたが、国自体が崩壊。
民主主義の国となりましたが、それも続かす、社会民主主義とも言える強権国家となりました。
インドは、世界最大の民主主義国家ですが、伝統的に中国とは敵対関係にあります。
ロシアと仲が良いとされていますが、実利を取り合う関係と言っていいでしょう。
ブラジルと南アフリカは民主主義国家ですが、ポピュリズムが強く、経済状況によって政治体制が大きく変わる国家と言えます。
こういった政治体制の違いは政策的な強調を難しくする大きな要因となっているのです。
●●3. 国際社会からの批判
中国はウイグル問題・チベット問題、さらには人民に対する抑圧など、多くの人権問題を抱えています。
ロシアも政敵を排除するような現政権の強権主義が横行。
ウクライナ問題も抱えています。
中国もロシアも国際社会から批判を受けることが多く、特にロシアのウクライナ侵攻はBRICSの国際的なイメージをも失墜させています。
これらの3つの問題点を克服するための、2023年に発表した拡大BRICS構想ですが、早くもその中のアルゼンチンが参加を辞退。
BRICSのこれからに暗雲が垂れ込める形となりました。
いずれにしても、BRICSのこれからにおいて、お互いの立場を尊重すること、そして共通の利益に基づいた協力態勢を構築することが重要となってきます。
●拡大BRICSでさらなる混沌に…
様々な問題を抱えるBRICS。
その問題を解決しないままの拡大BRICS構想を世界はどう見ているのでしょうか。
既存のBRICS5ヵ国だけで、G7の経済規模を上回るのですが、それが喫緊の脅威となっていないのはBRICSの結束の弱さにあるのは間違いありません。
先述した問題点も浮き彫りとされています。
そこで、BRICSが打った手が拡大BRICS。
サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、エジプトの5ヵ国が参加し、2024年から拡大BRICSとなりました。
世界が注目したのは、中東の3ヵ国が入ったこと。
いずれも世界有数の産油国です。
イランとエチオピア以外は米国をはじめとした西側諸国とも縁の深い国々です。
拡大BRICSは経済規模では、さらにG7にとって脅威となりますが、一方でG7との友好国も参加しているので、脅威といった面では薄まった印象です。
いずれにしても、経済規模はG7を遙かに凌駕しています。
資源を見ても、独占的な立場です。
しかし、10ヵ国と大所帯になって結束が強まるのか。
逆に難しい舵取りとなって空中分解必至なのか、世界は注目しています。