BRICSの将来展望はどうなってる?価値観を共有しているとは思えないけど…
2023年に従来の5ヵ国によるBRICSから、新たに6ヵ国の新加盟国を発表。
2024年には、新旧含めた11ヵ国による拡大BRICSが発足します。
と、思いきやアルゼンチンが拡大BRICSから脱退。
2024年は10ヵ国による拡大BRICSが発足することになりました。
価値観を共有しているとは思えない拡大BRICSの将来展望はどうなっているのでしょうか。
●BRICSの問題点
BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5つの新興国からなる経済グループです。
G7の先進国グループに次ぐ第2勢力として2000年代に注目を集めました。
2000年代は中国の台頭が著しく、GDPでも日本を抜いて世界第2位に踊り出た時期です。
経済的には失速していたロシアも依然として資源大国であり、天然ガスをはじめとしてEUはエネルギー事情でロシアに首根っこをつかまれている状況です。
ブラジルと南アフリカはそれぞれ南米大陸・アフリカ大陸随一の地域大国であり、地域での発言力の高さは群を抜いています。
そして、次世代の超大国と言われるインド。
GDPで日本を抜くのも時間の問題と言われています。
これだけ見ると、G7にとって脅威的な存在と言えるのは間違いないでしょう。
どの国も、表向きは他国の経済成長を祝福する立場ですが、裏でも面白く思っていないのは当然のことです。
BRICSの中でもロシアと中国は野心を隠さない覇権主義的な国であり、西側先進国と対峙する急先鋒的存在です。
この2国がいるからこそBRICSの成長を快く思ってない向きもあるでしょう。
救いはインドの存在です。
特に日本とは友好的であり親日国として知られています。
一方で伝統的な中立国であり、第3世界からの信頼も厚く中国やロシアとも仲の良い全方位外国が国是となっています。
それでも、最大の自由主義国であり、ロシアや中国もインドの存在を無視できない以上、G7をはじめとした西側諸国もインドとの関係を重視しています。
BRICSの目標は、世界に対する発言力・存在感の向上です。
2000年代は飛ぶ鳥を落とす勢いの中国の高度成長があり、他のロシア・インド・ブラジル・南アフリカも新興勢力として高い成長力を誇っていました。
いずれは、経済規模でG7を抜くのではないかと恐れられていました。
抜かないまでも、G7と比肩する勢力として世界に君臨することを目指しているのです。
特に、近年ではウクライナ問題によるロシアに対する制裁、経済成長の鈍化が鮮明になった中国。
これまで、BRICSを牽引していた2国が逆にBRICSの成長の足かせになってしまいました。
その中で、拡大BRICSの発表は起死回生の一手になったのは間違いありません。
一方で政変によるアルゼンチンの脱退は痛手ともなりました。
●BRICSの将来展望
BRICSの将来展望は、以下の要因によって左右されるのは間違いありません。
●各国経済の成長
BRICSの中でも成長率がダントツなのは言うまでもなく中国です。
そのため、BRICS全体の経済成長率は、中国の経済成長率に大きく左右されることになります。
中国経済が減速すれば、BRICS全体の成長率も低下することになります。
また、インドをはじめとした他の4カ国の経済成長も、BRICS全体の将来にとって重要です。
●政治的な安定
BRICS各国は、政治的な課題を抱えているのは間違いないでしょう。
ロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会からの批判を招いているのは周知の通りです。
ゴールが見えない中で長期化しているのはBRICSの不安定要素として暗い影を落としています。
ロシアのウクライナ侵攻は、BRICSの結束を弱体化させています。
中国はロシアを支持、インドもロシアに対する制裁に加わらず、結果としてロシアとの関係を維持しています。
ブラジルや南アフリカでは、政治的な混乱が続いているのも不安定要素として大きな事実です。
●国際関係
BRICSも目指しているのはG7との対抗軸ではなく、発言力を大きくすることで対等な立ち位置になることです。
さらにG7とは異なる国際秩序を模索していることも間違いのないところ。
対抗あるいは敵対することはBRICS全体の成長にはマイナス要因となります。
そのためにも、つかず離れずの高度な外交がBRICSの基本的な戦略といえます。
ただし、利害関係のみで結びついているのは間違いないのがBRICSの弱点と言えます。
ここに新しく加盟する拡大BRICSになってどのような舵取りを行うのかを世界が注目しています。
●今後予想される将来的なシナリオ
拡大BRICSの将来には、以下のシナリオが考えられます。
●成長シナリオ
中国経済が安定的に成長することが大前提ですが、中国経済の成長の鈍化がBRICSの結束を弱めることになるのではという懸念があります。
希望としてはインドの成長ですが、カースト制度による貧富の拡大をどうするのか、国内問題を解決するのが先決と言えるのがインドの問題です。
希望としては、拡大BRICSの中に産油国が含まれていること。
世界のEV化や脱炭素が言われている中、反動的な要因もあります。
その中で産油国を拡大BRICSに組み入れたことは、不安要素の多い中でファインプレーと言ってもいいでしょう。
●拡大BRICS
2024年は、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6ヵ国が新たにBRICSに加わり、拡大BRICSとしてスタートする年です。
この中で、アルゼンチンが脱退することで10ヵ国による拡大BRICSとなりますが、3国の産油国があること、エジプト・エチオピアというアフリカ諸国でも発言力の高い国を加えたことは大きいです。
これによって国連によるアフリカ票を固めることができるのは大きいと言えます。
●まとめ
ロシアへの制裁と中国の経済成長鈍化が大きなマイナス要因となっているBRICSですが、拡大BRICSになることでG7の対抗軸になる可能性は高く、決して無視できる存在ではありません。
拡大BRICSの成長は世界経済にとっては好まれるものであるのは間違いないところ。
一方で発言力が高くなることはG7にとっては警戒する要因とも言えるでしょう。