拡大BRICSははたしてG7を追い抜くことができるのか!?
BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国から成る新興市場国と発展途上国の組織です。
最近、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、アルゼンチンの6カ国が新たな加盟国として認められ、2024年1月1日からBRICS加盟国は11カ国に増えることになりました。
ただし、その後アルゼンチンでは政変が起こり、親米政権が誕生。
それに伴って、拡大BRICSへの加入が見送られました。
●拡大BRICSはG7を抜くのか
BRICSは、世界のGDPの4分の1以上、世界人口の約42%を占めており、その存在感は非常に大きいです。
しかし、組織としての一致した意思決定には至ってこなかったことも事実です。
BRICSは、政治体制や経済体制、米国に対するスタンス、根本的なイデオロギーの点で加盟国間に大きな違いがあります。
そのため、今回新たに加盟した6カ国も同じ構造を持っています。
サウジ、UAE、イランは外交関係正常化には至ったものの、サウジやUAEといった湾岸アラブ諸国にとって最大の脅威がイランであるという事実に変わりはありません。
エジプトとエチオピアは、ナイル川の水の利権をめぐり長年にわたって対立しています。
これら対立しあう諸国を包含することすらできる懐の深い組織と言えるかもしれませんが、同じ組織に属することで一致した結論に至るのは難しくなるでしょう。
BRICSは拡大傾向にあり、中国やロシアはそれを成果として誇っています。
しかし、これまで長らく、世界の政治・経済プレイヤーとしては存在感を発揮できずにいたBRICSが、さらに方向性の異なる多くの国を包摂したところで、組織としての一体性や統一された意思決定からは遠ざかるばかりであり、G7に匹敵するような影響力を持つようになる未来は想像しにくいでしょう。
●拡大BRICSの問題点
拡大BRICSが抱える問題点を考えてみます。
以下の3つが問題点として指摘されています。
●●経済格差
言わずもがな、拡大BRICSはもちろんですが、基本構成となるBRICS5ヵ国間でも経済格差が大きいことです。
中国とロシアが経済面で突出しており、BRICSを牽引していましたが、インドが台頭し、相対的にロシアが失速しています。
南アフリカとブラジルも経済大国ですが、世界的に見れば発展途上国の域を出ず、貧困問題を抱えています。
この経済格差はBRICSの結束を弱める要因となっています
●●政治体制の違い
BRICSは政治体制も異なります。
中国は社会主義国、ロシアは強権主義国、インドは民主主義国です。
これらの違いは政策的な強調を難しくする要因となっています。
●●国際社会からの批判
中国とロシアは人権問題やウクライナ問題で批判を受けています。
これらの問題はBRICSの国際的なイメージをも失墜させています。
以上のことから、決して一枚岩といえない中、いたずらに拡大路線に走るBRICSに向けて懸念が指摘されています。
資源を持つ国々も加盟していますが、これからの結束と協力態勢が重要です。
●未来志向の拡大BRICSを考える
拡大BRICSが考える未来志向の方向性を考えてみましょう。
●●経済的影響力の増大
BRICSに新たな加盟国が加わることで、経済的影響力が増大します。
加盟国の経済規模や資源を結集することで、世界経済に対する影響力を高めることができます。
●●多様性と相補性
新たな加盟国は、既存のBRICS加盟国とは異なる政治体制や経済モデルを持っています。
これにより、多様性と相補性が生まれ、さまざまな視点からの意見交換や協力が可能になります。
●●地域問題への対応
新たな加盟国は、地域問題に対して特定の専門知識やリソースを持っています。
これにより、BRICSが地域問題に対してより効果的に対応できるでしょう。
●●国際的な交流と協力
BRICS+の拡大は、国際的な交流と協力を促進します。
経済、文化、科学技術などの分野での連携が深まり、相互理解が進むことで、国際社会全体にプラスの影響を与えることが期待されます。
●拡大BRICSをまとめると
改めて問題点を挙げると、中心となる中国の経済の失墜が一番にあげられます。
長年高度経済成長を続け、GDPで米国をこの2,3年で抜くのでは、と見られていました。
しかし、中国の経済の失速がはっきりとした中で、米国を抜くのは今世紀中でも無理と言われるくらの失墜ぶりです。
そして、もう一つの雄であるロシアの凋落です。
ご存知のようにウクライナ侵攻における経済制裁の影響は大きく、この先どう転んでもロシア経済も大きく失速することになります。
一方でインドはこの2,3年のうちにGDPで日本を抜くのが確実視されています。
人口ではすでに中国を抜いて世界一の人口を誇っており、人口増のスピードも緩んでいません。
インドはロシア寄りとも言われていますが、米国や日本とも強いつながりがあり、拡大BRICSの中でも西側寄りなのもG7にとっては頼もしい存在といえます。
拡大BRICSの他の国々はどちらかというと資源国や農業国が多く、一つひとつは素晴らしいものがあっても、中国・ロシア・インド頼みであることは間違いなく、この3国が拡大BRICSを引っ張っていくことになります。