イラク・ディナールの今後の動向について
イラク・ディナール(IQD)は、イラクの公式通貨です。
イラクの経済状況は脆弱であり、その動向は国内はもちろん国外の経済状況に大きく影響を受けています。
以この記事では、イラク・ディナールの最新動向について詳しく紹介します。
●経済背景と通貨政策
イラクは、中東でも膨大な石油埋蔵量を誇る産油国です。
そのため典型的な石油依存経済であり、石油価格の変動が経済に大きな影響を与えています。
1970年代までは英国からの支配を離れ、産油国として順調な経済成長を遂げてきました。
一時はサウジアラビアに次ぐ中東の経済大国及び石油産出量を誇るまでになりました。
一方で、1980年代のイラン・イラク戦争、さらに1990年代の湾岸戦争、その後多国籍軍による支配を経たイラクは、現在においても1人あたりの生活支出は、未だにイラン・イラク戦争前よりも低い水準となっています。
度重なる戦争によって石油施設が破壊され、現在においても復旧半ばであるということです。
そして、2020年には、石油価格の急落と新型コロナによるパンデミックの影響で経済が大きく打撃を受けることになりました。
このため、イラク中央銀行は2020年12月にディナールの公定レートを対ドルで約20%切り下げたのです。
切り下げによって、1ドル=1450ディナールとなりました。
これは、2003年以来の大幅な切り下げとなったのです。
この切り下げは長い不況による財政難に対処するための措置でした。
●通貨評価替えの議論
イラクでは、通貨評価替え(RV)の議論が続いています。
通貨評価替えは、通貨の価値を再評価するもので、経済の安定化を図るための手段です。
通常、経済がインフレに振れたときに国の中央銀行がさらなるインフレを抑えるために通貨価値を引き上げるものです。
イラク中央銀行は、ディナールの価値を引き上げることで、インフレを抑制する議論を進めているとされています。
通過評価替えによって、国際競争力を高めることを目指すものですが、通過評価替えは一時的なカンフル剤としては一定の効果があります。
それは、外国からはイラクの商品が割安に見えるためにイラクから見た輸出増が見込めるからです。
輸出増によって経済が潤うのですが、その国に輸出する商品がなければなりません。
イラクの輸出商品といえばまっさきに浮かぶのが石油です。
まさに、石油をどんどん売ろうというのがイラク政府及びイラク中央銀行が感挙げているものなのです。
いっぽうで、実際の評価替えの実施には慎重な検討が必要です。
一時的に、経済が潤うかもしれませんが、周到な経済政策、つまり通過評価替えに次ぐしっかりとした対策が実施されないと、インフレがさらに加速する恐れがあるのです。
通貨価値を引き上げる通過評価替えを行うと、輸出産業は一時的に伸びますが輸入ができなくなります。
これは、高くなって買えなくなることを意味します。
そうなると、それまで輸入に頼っていた商品が街中に並ばなくなるので、さらにインフレが進むということになります。
そのため、通過評価替えに次ぐ経済対策をしなければいけないのですが、実効性や有効性が議論されており、なかなか通過評価替えが行えない状態となっているのです。
世界はそれを注視している状態でもあります。
●為替レートの動向
2024年10月現在、イラク・ディナールの為替レートは安定しています。
1ドル=1450ディナールの公定レートが維持されています。
一方でこの状態が長く続くかどうかは不透明です。
中東の真ん中に位置する大国であり、イラク・ディナールは中東情勢にとても敏感に反応します。
政治的・経済的な不安定要因が影響を与えることがあるのです。
例えば、2023年初頭には、イラク中央銀行がディナールに対するドルの為替を調整し、ディナールの価値が一時的に上昇した例があります。
●国際的な影響
イラク・ディナールの価値は、国際的な経済状況にも影響を受けることが多々あります。
特に、石油価格の変動や地域の政治的安定性が重要な要因となっています。
イラクは、石油輸出国としての地位を維持するために、安定した通貨政策を追求しています。
これは、現在もイラクに対して強い影響力を持っている米国の意思と重なります。
さらにイラク・ディナールの安定には国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際機関との協力が重要です。
これらの機関からの支援を受けながらイラクは経済改革を進めています。
●将来の展望
イラク・ディナールの将来展望は、いくつかのシナリオが考えられます。
イラク経済の改革が順調に進み、石油価格が安定すすることが第一ですが、それによってディナールの価値も安定するでしょう。
一方で、政治的な不安定や経済的なショックが続く場合、ディナールの価値が再び下落するリスクもあります。
いずれにしても、イスラエルとイランの問題が解決しなければいつイラクに飛び火するかもしれません。
そういったリスクも考えなければならず、イラク及び中東情勢の安定化が望まれます。
●投資家への影響
イラク・ディナールの動向は、投資家にとっても重要です。
特に、イラクの経済成長や通貨政策の変化は、投資機会やリスクに影響を与えるのは間違いありません。
現在は安定していますが、いつ流動するかわからないリスクがイラク・ディナールにはあります。
一方で、短期的に稼ぎたい投資家にとっては、ドラスティックに変化するイラク・ディナールはとても魅力的に映ると思います。
投資家は、イラクの経済状況や通貨政策を注視することはもちろんで、適切な投資戦略を立てる必要があります。
●まとめ
イラク・ディナールの最新動向は、国内外の経済状況や通貨政策に大きく依存しているといえます。
自国の有力な産業及び輸出商品が原油に限られているので、それは当然ともいえます。
石油価格の変動や政治的な安定性が重要な要因であり、今後の経済改革の進展がディナールの価値に大きく影響を与えるでしょう。
RV(評価替え)や今後の経済状況、金融に関しての旬な話題などを通して、あなたの大事な資産を守る為に、役立つような記事を投稿しています。
(あくまで個人の見解ですので、情報の活用や真偽については自己判断でお願いします)