BRICSに入りたい国が多いのはどうして?参入不許可で欧米を牽制も
ロシアや中国、インドの3枚看板と言われることの多いBRICSですが、BRICSの5ヵ国を形成するブラジルと南アフリカも南米大陸とアフリカ大陸の盟主とも言える存在です。
●BRICSの経緯
ロシア・中国・インドの存在は大きく、BRICS5ヵ国の総人口は全世界の約43%、GDPは同じく24%を占めています。
これだけ見ても経済的にとても大きな地位を持っているのは間違いないでしょう。
人口についてはロシアと中国は減少に転じていますがインドの人口増加はまだまだ天井知らずで、全世界に対する人口比はこれからさらに上がっていくのは確実視されています。
さらに、2024年初頭には、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプトの4ヵ国が加わって拡大体制となりました。
中東諸国を取り込んだのが今回の目玉といってよいでしょう。イランは元々ロシア・中国に寄っていたので予想できましたが、UAEとエジプトが入ったのが大きくて、エチオピアもアフリカ大陸で安定した地位を保っています。
BRICSも欧米を除いた新興国の集まりとしてバランスの良さが際立ちました。一方で拡大BRICSに参加予定だったアルゼンチンのドタキャンもありました。
中東の盟主とも言えるサウジアラビアも参加が予想されていましたが、現在に至るまで検討中となっています。
BRICSの形が出来つつあったのは2001年からで、正式にBRICSの首脳会議が開かれた2009年(南アは2011年に参加)です。
そこから目立った動きは見えなかったのですが、2024年はBRICSの拡大体制の後、後半にさしかかって大きな動きがありました。
●反欧米に偏りすぎるBRICS
BRICSへの参加を巡って、各国のつばぜりあいが強まっています。
米欧への対抗軸として、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国を取り込み、勢力拡大を狙うプーチン露大統領は「どの国にも扉は開かれている」と自負しています。
ウクライナ侵攻問題を抱えているプーチン大統領がBRICS勢力の拡大をもっとも望んでいるといわれているのです。
一方で、異なる現実が露呈しているという声も。
「不可解かつ不道徳な攻撃に憤りと恥辱を感じる」
10月24日のBRICS首脳会議最終日のことです。
BRICS参加の前準備としてパートナー国の発表がありました。
そこで、南米のベネズエラがパートナー国に参加しないことが発表されたのです。拡大BRICSにアルゼンチンが参加しない苦い記憶が思い出されます。
これには、ベネズエラと敵対するブラジルの反対がありました。
そこで、プーチン大統領がブラジル政府を非難する声明を出しました。
ブラジルメディアによれば、BRICS創設当初からの加盟国ブラジルが、ニコラス・マドゥロ大統領が強権的支配を続けるベネズエラの参加を拒否したというのです。
ベネズエラには、7月の大統領選の不正が指摘される中で、国際社会での孤立を打開したい思惑がありました。
そこで、BRICSのパートナー国入りを狙っていたのです。
マドゥロ大統領が自らカザン入りしても参加が認められなかったため、憤りは収まらず、10月30日には駐ブラジル大使の召還を決定しました。
ブラジルがブレーキとなったのは、ベネズエラだけではありませんでした。
独裁色を強める中米ニカラグアのパートナー国参加にも反対したというのです。
これは、ブラジルが、BRICSが過度に「反米欧」色を強めることに警戒したことも一因とみられています。
●パートナー国は準加盟国
BRICSでは創設メンバー5ヵ国の発言権が強いとされています。
インドのナレンドラ・モディ首相は首脳会議でパートナー国の参加を歓迎しつつ、「創設メンバーの意見が尊重されるべきだ」と訴えていました。
中露やインドなどは事実上の拒否権を握っていることを示唆したのです。
インドと領土問題で対立するパキスタンは2023年、BRICS加盟を申請しました。
同国の有力ウルドゥー語紙ジャングによると、議長国ロシアの支持を得たにもかかわらず、インドの反対で実現しなかったというのです。
ロシアは今回、インドの求めに応じて、パキスタン代表団をカザンに招くことさえも見送りました。
パートナー国候補は当初、13か国と報じられていました。
しかし、正式発表はありません。プーチン氏も「招待状を送り、肯定的な回答が得られれば、パートナー国の地位が与えられる」と説明していましたが、位置づけはあいまいなままです。
南アフリカのメディアによると、同国の政府高官は、パートナー国は事実上の「準加盟国」でBRICS関連の会合に参加可能といっています。
一方で、成果文書に関与できないとの見解を示しているのです。
2023年、一度決定しながら加盟しなかったアルゼンチンやサウジアラビアの例を考慮し、一定期間様子をみる意味があるのは間違いないでしょう。
そのためのパートナー国の設置ということです。
パートナー国を巡っては、ベラルーシやキューバなどがSNSなどで参加を認めています。
反面、トルコやベトナムなどは首脳会議終了後、政府高官の記者会見などで参加したとは認めていません。
ここに、利害のみで寄せ集まったBRICSが烏合の衆といわれる所以でもあります。
特にパートナー国はその意味合いが強く、ブラジルやインドの例があるように、創設5ヵ国との関係が悪ければ、参加が見送られるなど、BRICSの成長自体にも黄信号がともっています。
それを裏付けるかのような10月のBRICS首脳会議でした。
●BRICSに「100%関税」?
米国のトランプ次期大統領が11月30日、「BRICS」の加盟国が貿易取引で米ドルの利用を減らす行動に出れば、「100%の関税に直面し、素晴らしい米国市場から手を引いてもらうことになる」と自身のSNSに投稿しました。
存在感を増すBRICSによるドル依存からの脱却の動きを、けん制した形です。
さらにトランプ氏は、「BRICSが国際貿易においてドルに取って代わる可能性はゼロだ」とも投稿しています。
BRICSは欧米諸国に対抗するため米ドルを基軸通貨とする国際通貨制度を見直し、自国通貨による貿易取引の決済システムの構築などを目指して協議しています。
この動きがトランプ氏を苛立たせているのは間違いないでしょう。
露国営メディアによると、プーチン大統領は2024年9月、「BRICS加盟国の貿易取引で、自国通貨の使用割合は65%に達している」と述べたというのです。
トランプ氏は「タリフマン(関税男)」を自称し、他国との交渉では、関税の引き上げを武器に譲歩を迫る戦略です。
11月25日には、不法移民や違法薬物の流入への対抗措置をとりました。
それは、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品には10%関税を上乗せすると表明しています。
関税措置を巡り、トランプ氏は11月29日、フロリダ州にある邸宅でカナダのトルドー首相と会談。
トランプ氏は、米国への違法薬物の流入や米国が抱える巨額の貿易赤字といった課題について協議。
トルドー氏が解決に向けた協力を約束したと明かしました。
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