イラクディナールはイラクの通貨…FX取引は『ドル円』が相場だけどこっちはかなり穴場です
イラクの通貨はイラクディナールです。
実は1931年までの通貨は『インド・ルピー』でした。
英国が中東支配をしていた名残といってもいいでしょう。
意外と強い通貨であり、為替レートは1959年まで英国ポンドと1対1の等価で取引されていました。
その後、米ドルが強くなると、1イラクディナール=2.8ドルで取引されるようになります。
●湾岸戦争まではがんばっていたイラクディナール
産油国でもあり、中東の中心地としてかなりの強さを発揮していたイラクディナール。
英ポンドはもちろん、米ドルにも対等の強さを発揮していたのですが、1971年から1973年にかけて、実質的なドルの切り下げが行われました。
その切り下げに追従しなかったため、1イラクディナールは3.3778ドルまで上昇。
こうなっては、輸出の要である原油の輸出にも影響が出ました。
その後、5%ドルの切り下げを容認。
1イラクディナール=3.2169ドルに落ち着きます。
1980年代のイラン・イラク戦争でも、イラクディナールは影響を受けますが、価格の変動は最小限に抑えられます。
つまり、イラクにおいての原油の輸出などは安定していたのです。
イラン・イラク戦争は別名『イライラ戦争』とも呼ばれ、一進一退の攻防を繰り広げながら、約10年の長きにわたって戦争が行われました。
当初は、戦争を仕掛けたイラク側が優勢でしたが、中盤以降はイラン押し返す形となります。
それでも、イラクディナールの為替相場が安定していたのは、西側諸国のバックアップあってこそです。
それは、イラン・イラク戦争のきっかけとなったのが、イラン革命によるものだったからです。
イランの革命の余波が他国に及ばないためにも、西側諸国がこぞってイラクを支援。
一方でイランを支援したのは当時のソ連であり、アフリカからはリビアが公然とイランを支援しました。
転機が訪れたのは1986年に入ってからの米国の介入です。
敵対していたリビアに対して米国が攻撃、それにたいしてイランが米国タンカーを攻撃、イラクのクルド人に対する毒ガス攻撃、サウジアラビアとイランの断交など様々な事態がおきました。
結果として米国がイランの油田を攻撃。
これによって起きたのがブラックマンデーという株価大暴落です。
ブラックマンデーは戦争の当事者であった、イラン・イラクを直撃。
特にイラクディナールも打撃を受けます。
こうした経緯から、国連の仲介もありイラン。イラク戦争も1988年にようやく停戦となりました。
●湾岸戦争が終わりの始まり…
振り返ると、イラクに君臨したサダム・フセイン体制の終わりの始まりは湾岸戦争でしょう。
イラン・イラク戦争では米国をはじめとした西側諸国が支援をしたため、物的・人的な資源の損耗からもいち早く立ち直りました。
イラクディナールの価値の下落が防げたのも西側諸国の支援の賜と言ってもよいでしょう。
元々、肥沃な土地と莫大な油田埋蔵量、中東の中心地としての地の利もあり、西側諸国が支援したのは当然とも言えます。
この頃が、サダム・フセイン体制の絶頂期といっていいかもしれません。
そして、起こったのが1991年の湾岸戦争です。
それは、1990年のイラクのクウェート侵攻から始まりました。
イラク以上に西側よりだったクウェートですから、これには西側諸国がこぞってクウェートについたのは当然のことです。
イラク側の狙いは、イラン・イラク戦争によるクウェートに対しての多額な負債の帳消しを狙ったもので、到底世界が容認できるものではなかったのです。
●イラクの衰退と復興
湾岸戦争では、ほぼ世界を敵に回したといっていいイラクは、ほぼ瞬殺されました。
特に、米国をはじめとした優勢な航空戦力が功を奏し、早い段階で制空権を確保したのが大きかったのです。
戦闘は比較的短い期間で終了。
イラクには人的にも物的にも多大な被害となりました。
この時期、戦費調達のためにイラクディナールが大量に刷られています。
イラン・イラク戦争を経た時期から、イラクディナールの暴落は始まっており、湾岸戦争での大量のイラクディナール増刷は焼け石に水というよりも、暴落にさらに拍車をかける形となったのは言うまでもありません。
2001年の同時多発テロから、大量破壊兵器保持を理由にイラク戦争が勃発。
これによって、サダム・フセイン体制が終わりを告げます。
その後もイラク国内は内戦に近い状態が続き、イラクディナールも常に不安定な状態となります。
ただし、こういった不安定な状態というのは、投資家、特に日々の為替レートで稼ぐデイトレーダーにとっては、とてもおいしい状況が続いたのは間違いありません。
米ドルはもちろん、他の通貨においても変動が激しいので、損をすることもあれば大勝することもあるといった、まさに夢のFX取引が実現したのです。
とはいっても、現在の1イラクディナール=0.00076米ドルですから、昔と比べてかなり変動しています。
現在は、多少落ち着いた感のあるイラクディナールですが、それでもデイトレーダーからの熱視線はいまだに止みません。