東南アジア地域大国としてのインドネシアと通貨基軸のルピア
ルピアはインドネシアの基軸通貨として知られています。
インドネシア銀行が発行管理している通貨であり、サンスクリット語で「銀」を意味しています。
また、世界的に「ルピア」で通っているのですが、インドネシア人は「ペラ(インドネシア語での銀)」を使うこともあるようです。
ルピアは100セントに分けられますが、近年の高度インフレによってセント建ての硬貨や紙幣は時代遅れのものとなりました。
また、ルピアの発端は第二次大戦中における日本の占領時代となっています。
●複雑な法定通貨
通貨の単位は「1の位」から始まるものですが、インドネシアの現在のルピアは50ルピアから始まります。
1ルピアも存在しているのですが、先述したセント建てと同様に高度インフレによって事実上無価値となっており、現在は流通していないことが確認されています。
よって、現在は50ルピアから1,000ルピアまでの硬貨と、1,000ルピアから100,000ルピアまでの紙幣で構成されています。
安定的な日本の円と違って、時代を追うごとに高額紙幣が発行されているのがインドネシアルピアの特徴といえます。
それは、止まらない高度インフレの影響がもっとも顕著となっているといっていいでしょう。
●インドネシアの経済事情とルピア
東南アジアにおける地域大国として知られるインドネシア。
人口も資源も多く、近年の高い経済成長率にも注目が集まっています。
それでいて、2013年以降の構造的な貿易赤字がリスク要因として浮上しているのも見逃せません。
さらに経済基盤は、米国の金融政策に左右されており、その脆弱性から米国の金融緩和縮小政策によるもので、対米国ドルに対してルピア安が進行しています。
そして、2018年に米国連邦準備制度理事会(FRB)が禁輸引き締め政策に舵を切りました。
それによって、1米ドル14,000ルピアを超えてしまいます。
そこからさらにルピア売りが始まり、ルピア安がますます進行。
1998年のアジア通貨危機以来のルピア安となりました。
そこから、米国当局の利上げペースの緩和により一息ついた形となりましたが、極度なルピア安が解消されることはなく、通貨安のリスクをはらみながらの経済活動となっています。
一般的に米ドルに対して自国通貨が安いと輸出に有利であるので外貨獲得には好影響であるとされています。
しかし、外貨の積立てができるかというと、そのほとんどが輸入で消えてしまうのです。
当然ですが、輸入による支払いには多くの外貨が必要となるので、輸出における外貨の積立てが相殺またはマイナスになるのは仕方のないところです。
インドネシアの貿易額を調べて見ても貿易赤字が続いているのも高度なルピア安が影響しているのは間違いありません。
●ルピア安の流れからデジタル通貨へ
ルピア安が長く続くインドネシアにおいて、多くのルピア紙幣を刷っても紙切れに近いものとなっていました。
通貨評価替えを行うと国際的な信用を失うことにもなりかねません。
そこで、ルピア安の突破口として期待されているのが「デジタルルピア」です。
インドネシアは経済白書を通じて、デジタルルピア開発に関して2022年11月30日にインドネシア中央銀行において、デジタル通貨を開発するプロジェクトを開始しています。
すでにオムニバス法の可決によって、デジタルルピアはルピアの一種として合法化されています。
今後は世界的にデジタル通貨が世界の潮流となるのは間違いないところです。
それは、インフレや通貨安に苦しむ発展途上国や中進国から始まるでしょう。
先進国の場合、経済規模が大きいのでデジタル通貨に舵を切るには相応な準備が必要なためです。
また、デジタル通貨の懸念あるいはリスクとしては、お金の流れを当局が把握しやすい点にあります。
それは監視社会になりかねないという懸念です。
日本では、マイナンバーカードにするにも大きな抵抗がありました。
デジタル通貨にするにはさらなる抵抗があるでしょう。
逆に詐欺や不正が横行する途上国であればあるほど、デジタル通貨に対する恩恵は計り知れないものがあると言えます。
一方でデジタル通貨システムを中央主権的に行うのかブロックチェーン方式を採用するのか、さらなる折衷案があるか、デジタル通貨システムの方式についても注目が集まります。
果たしてインドネシアのデジタル通貨政策は成功するのでしょうか。
デジタル化の流れは変わらないというのが大方の見方ですが、中国のような監視社会、管理型社会に対するアレルギーというのは確かに存在します。
一方で、そうしなければならないといったジレンマがあるのも事実なのです。
そういった意味でも、インドネシアのデジタル通貨政策は一つの指標として世界中が注目しているといっていいでしょう。
また、世界の基軸通貨である米国ドル、さらには米国政府の動向も気になるところです。
米国は二大政党制であり現在の政権である民主党はデジタル派であり、共和党はデジタル反対の方針となっています。
今後は米国も政権交代があるのか、民主党政権が続くのかも注目したいところです。