通貨評価替えによって一国の通貨の価値を調整!そのメリットデメリットとは!?
通貨評価替えは、経済状況の変化や為替レートの変動に対応するために実施されます。
当然ですが、通貨評価替えは平静な状況では実施されません。
通貨評価替えが行われるのは通貨の危機の状況にある場合です。
“応急処置”あるいは”劇薬”と言ってもよいものです。
●通貨評価替えについて
通貨評価替えには、以下の2種類があります。
・切り下げ
自国の通貨価値を下げること。輸出を促進し、輸入を抑制する効果があります。
・切り上げ
自国の通貨価値を上げること。輸入を促進し、輸出を抑制する効果があります。
通貨評価替えは、経済に大きな影響を与える可能性があります。
それが”劇薬”と呼ばれる所以です。
例えば、輸出企業にとっては、通貨切り下げが有利になります。
一方、輸入企業にとっては、通貨切り上げが不利になるのです。
近年では、通貨評価替えはあまり行われていません。
理由は様々ですが、一番の理由は多くの国が変動為替制度を採用しているためです。
変動為替制度では、通貨の価値は市場メカニズムによって決定されます。
しかし、一部の国では、依然として通貨評価替えが行われることがあります。
直近では、2023年7月には、スリランカが通貨切り下げを実施しました。
●●スリランカの状況
2023年7月、スリランカは深刻な経済危機と外貨不足に直面。
通貨スリランカ・ルピーを大幅に切り下げたのです。
通貨切り下げは、以下の3つの要因によるものです。
・深刻な外貨不足
・高騰する輸入品
・拡大する財政赤字
深刻な外貨不足となる原因は、主要産業である観光業が壊滅したことによります。
元々、経済が脆弱だったところに2020年に新型コロナウイルスが世界的流行を迎え、観光客が激減。
当然外国人客が落とす外貨が激減。
それによって深刻な外貨不足が起こり、輸入品の支払いなどが滞るようになりました。
支払いができないところに、ロシアによるウクライナ侵攻による影響がスリランカにのしかかります。
輸入品の高騰です。
燃料や食料など輸入に頼っている物品の価格が高騰。
輸入品の支払いが滞っているうえに、輸入品の価格が高騰するという悪循環に見舞われました。
債務の返済に困窮し、物価高と外貨不足といった追い打ちから、独立以来という経済危機に陥るのです。
膨らむ財政赤字によって、2023年7月5日に国家としての破産を宣言。
IMF(国際通貨基金)に支援を要請しました。
これによって、国内の経済改革及び、対外債務(中国、インド、日本など)の整理再編を行うことになります。
その経済改革の一つとして通貨の切り下げが行われました。
通貨切り下げは、輸出企業にとっては有利に働きますがが、輸入企業にとっては不利となります。
また、インフレを加速させる可能性があります。
スリランカ政府は、通貨危機に対処するため、国際通貨基金(IMF)からの融資を受けることで合意しています。
●通貨評価替えの問題点
“劇薬”とも呼ばれる通貨評価替えですが、座して死を迎えるよりもましな施策です。
裏を返せば”劇薬”を使わなければいけないほど追い詰められているということです。
通貨評価替えは、自国の通貨価値を人工的に(無理矢理)調整する経済政策です。
当然ですが、通貨評価替えには、以下のような問題点があります。
●●経済の混乱を招く
稀に表現をやわらかく、混乱を招く可能性があると言われることがあります。
可能性ではなくて必ず混乱を招くことは歴史が証明しています。
ただし、どん底から立ち直る施策であることは間違いなく、そうせざるを得なくなった時の為政者を責めるべきなのは言うまでもありません。
よくいわれることですが、通貨評価替えは、輸出企業にとって有利になる一方で、輸入企業にとっては不利になります。
そのため、通貨評価替えは、国内経済の混乱を招き、景気後退につながる可能性があります。
●●投機資金の流入・流出を招く
通貨評価替えが行われると、投機家は通貨価値の変動を狙って資金を投機するようになります。
これは、金融市場の混乱や為替レートの急激な変動につながる可能性があります。
●●国際的な貿易摩擦を招く
通貨評価替えは、自国の輸出を促進するために実施されることが多いです。
むしろそれが目的であり、外貨を稼ぐためには必然ともいえる施策です。
一方で、他の国にとっては自国の輸出競争力を低下させることになります。
そのため、国際的な貿易摩擦を招くことは必定です。
●●効果が持続しない可能性
“劇薬”はときとして”一時しのぎ”に過ぎない可能性があります。
言うなれば”延命措置”に過ぎないこともあるのです。
通貨評価替えは、一時的に輸出を増加させる効果があるかもしれません。
しかし、長期的に見ると効果が持続しない可能性が多々あります。
これは、他の国が自国の通貨を評価替えしたり、輸出企業が生産コストを削減したりするなどの対応を取るためです。
●●倫理的な問題
通貨評価替えは、自国の利益のために他国の通貨価値を操作することになります。
これは、国際的な協調の精神に反する行為とも言えます。
一国だけの問題ではなく、他国に深刻な影響を及ぼすものであり、倫理的な問題があるという指摘もあります。
●通貨評価替えによるメリット
通貨評価替えは、自国の通貨価値を人工的に調整する経済政策であり、様々なメリットがあります。
●●輸出増加
自国通貨が安くなると、輸出企業にとって有利になり、輸出が促進されます。
これは、国内企業の収益増加や雇用創出につながります。
●●輸入抑制
自国通貨が安くなると、輸入品が割高になり、輸入が抑制されます。
これは、国内産業の保護や経常収支の改善につながります。
●●デフレ対策
デフレ局面において、通貨評価替えによって国内物価を上昇させることができます。
これは、景気回復や経済活性化につながる可能性があります。
●●国際競争力強化
通貨評価替えによって、自国の輸出企業の国際競争力を強化することができます。
これは、世界市場におけるシェア拡大や収益増加につながる可能性があります。
●●観光客誘致
通貨評価替えによって、自国への観光客誘致を促進することができます。
これは、観光業の活性化や地域経済の振興につながる可能性があります。
●●海外投資増加
通貨評価替えによって、自国への海外投資を増加させることができます。
これは、技術移転や雇用創出につながる可能性があります。
●まとめ
以上のように通貨評価替えによるメリットデメリットをあげてみました。
メリットがある…と考えることができますが、その前に国の経済は破綻しているので、そこに住む人々の生活を直撃します。
ただし、すでにどん底なので、そこからあらゆる施策を行って経済を上向きにさせる必要があるのです。
そのための最善策が”通貨評価替え”であるのは間違いありません。